TOUCH OF SPRITENESS

June 27, 2017

 

第2回 地獄の道は「効率化」で敷き詰められ・・・(涙)

 

​​友岡卓司

ライティング&コンポジットスーパーバイザー


誰でもできるシステム


「集まったスタッフは新人ばかり。なんとか作業を効率化して誰でもできるシステムにできないものか。」
 

2010年の春、あるテレビアニメシリーズのプロジェクトが始動した頃のプロデューサーからの要望だった。当時ある部署の管理職をしていた自分は「作業を短縮する」を効率化と認識していたが、「誰でもできる」を効率化として認識したのはそのときが初めてだった。すこし困惑したことを今でも覚えている。

 

 

「人減らし」から「入れ替え可能」へ

 

一般に効率化の目的は人的コストの削減。いわゆる「人減らし」だ。テレビシリーズなどの低予算のプロジェクトなら特に必要で、そのための「作業を短縮する」するためのシステムやツールを開発しなければならない。ということを疑う余地のない使命だ、と妄信して働いてきた自分は経営者にはとても見本的なサラリーマンだった。

人減らしと言っても実際自分の場合、社員の首を切る訳ではないのだが(そもそもその権限もないが)どこか罪悪感を感じていた。産まれるはずの雇用の機会を自分の行為によって奪っているのでは。まるで中絶を手伝っているかのような感覚だった。(とはあまりに大げさで気取り過ぎ。偽善者かナルシストかと思われそうなので自分で突っ込んでおこう。どちらにしても自意識過剰。)

「誰でもできる」効率化とは作業を単純化して究極的にはどんな人でもすぐに業務ができるようにすること。いつ辞めても良く、必要なら人を選ばないので代わりは見つかり易い。まさに「入れ替え可能」なシステムだ。企業からすれば人的リスクヘッジであり、社員教育のコストも省けるなどとても魅力的な効率化だ。

ということで効率化には「人減らし」だけでなく「入れ替え可能」にする作用があるといえる。

 

 

効率化は労働移動の種か

 

効率化による人減らしは昔からあった。例えば18世紀の産業革命。機械化で効率化した綿工業では失業者を産んだ。ただその既存の産業の効率化で需要が拡大し、結果として新規産業が生まれ失業が解消されていった。

局所では人減らしに見えても、全体から見れば人が移動しているととれ、効率化が労働移動を促しているともいえる。ただこれには経済成長していて新規産業が産まれる環境があることが前提だろう。今後も同じことが繰り返されるとは言えない。

 

 

歯車化と「入れ替え可能」

 

一般に昔から企業組織が大きくなると業務は分業化されより単純化されてきた。いわゆる労働の歯車化だ。かつて古代バブル記「組織の歯車なんかになりたくない」なんてセリフもあった。労働での自己実現の願望として使われていたこのセリフも化石化し、その後の就職氷河期では働くこと以外での自己の価値が語られ、あの「自分探し」のオンリーワン信仰へとつながっていったのだろう。

何れにしても「入れ替え可能」へとつながる労働の歯車化はこれまでも行われ、これからも行われて行くだろう。(労働の歯車化なんてことを書くと左の人と思われるるかもしれない、と自意識過剰がまたでたが、あえて左で突き切ってみたい。)

この歯車が本当の意味での「入れ替え可能」なものであれば、あらゆる多様性のある歯車で、どんな組織も回るようになるかもしれない。それは歯車の年代も厭わないからリユースもでき、完全に平等で循環可能な労働市場になるかもしれない。(これって社会主義?)ただこれも完全雇用状態に近い環境が前提ではあるだろう。

また仮にこのようなことが可能になったとして、労働での自己実現は期待できるだろうか。個々の価値が平等で差が無くなった労働市場の世界で、自分探しの旅は意味を持つだろうか。

 

 

真打、人工知能登場!

 

最後に究極の効率化、人工知能を語らずには終われない 。Amazon GOなどでのレジ打の省略、自動運転によるタクシーやバスなどの運転手の代替。これからますます人から人工知能への置き換えが進んで行く。入れ替えの循環はなく、そっくり人口知能へ「置換」されていく。

また単純作業よりもホワイトカラーの知的業務のほうが置き換えが進むと言われている。例えば会計士やファンドマネージャーなどの専門職や管理職など。当然自分もいつかは人工知能と置き換えられるのだろう。人工知能への置き換えが進んだ果ての世界、働く人間は経営者一人のみ、なんてことを言っても、誇大妄想の痛い人だと思われないか心配する自意識過剰を発動する必要もないだろう。

遠くない未来、かつての某アイドルの曲にある有名な歌詞とはだいぶ違う価値観の歌が、世相を語ることになるかもしれない。

「ナンバーワンになったほうがいい、そもそも差が無いオンリーワン」

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

Latest Articles
Please reload

Categories
Please reload

Archives
Please reload